2020年、まぁ本当にいろんなことがありました。社会的にも個人的にも、言えること言えないことありますが。
言わずと知れたコロナ禍については、別に感染症についてなにか知っているわけでもなし、確かなことは未だによく分からないし、いろんな人がいろんなことを言っているので、私が語れることは余りないんですが、そうですね、多分歴史に与える影響としては30年前の冷戦崩壊以来の出来事だと思います。天安門事件から始まって、ソ連が突然なくなってベルリンの壁が崩れて、チャウシェスクが処刑されてあっという間に東欧革命が始まって、鉄のカーテンの向こう側、共産圏が消え失せた。そういう世界史的な事件を昭和天皇が崩御して変な自粛気分の日本から眺めていて、当時私は15歳くらいの多感で(笑)早熟な少年だったし、平々凡々とした日常というのは人間に知覚しうるタイムスケールに制約された共同幻想なのだなと。人間が知覚できる時間感覚って精々30年くらいですからね、そういうのは生物としての寿命でタイムスケールが決まるんだと思うんで、まぁでもそういうのを超える変動というのはあるわけで、今回のコロナ禍はそういうスケールでの影響を与えるんだろうなと思います。
既に個々人の日常のレベルでの平凡さというのを破壊してしまっているからね、我々の生活が平凡という共同幻想に乗っかっていただけというのを暴露することによって。ずっと続くと信じていたもの、変えられないと感じていたもの、そういうものに大した根拠はなかった、ただ昨日までそうだったから今日も明日もそうだと思っていただけだったと。911も311もそうだったように個人の意識のレベルではこれもすぐに過去になっていくんでしょうけど、WWⅡが高度資本主義社会を、冷戦崩壊がグローバリゼーションを生んだように、コロナ禍もポスト・グローバリゼーションのような、なにか新しいプロトコルを生んでいくんでしょうね。それがどんなものかわかりませんが。
そういえばいま『Death Stranding』という、買ってからずっと放置してたゲームをしてるんですね。『Metal Gear Solid』の小島秀夫の作品で、超自然的な災害で人類社会が崩壊して、通信や物流も止まって人々は都市や個人で孤立しながら生活をしている、そういう引きこもりになった人々のあいだを配達人のサム・ブリッジスが荷物を届けたり通信網を復旧したりしながら繋いでいく、まぁこう書くとなにが面白いのかよくわからないかもしれませんが(笑)、自分自身の生活がいまリモートワークで食事はUber Eats、買い物はほとんどAmazonという状況なんで、まさかコロナ禍を予測していたわけでもないでしょうが、恐ろしいほど預言的な内容になっています。MGSで冷戦時代を主題としていた小島がポスト・グローバリゼーションのような世界をイメージして作ったら、現実があっという間に追いつきつつあるという感じがします。20年代は分断と再構築の時代になるのかもしれませんね。
個人的には2020年の前半はとにかく危機対応に追われた半年でした。ちょっと内容は言えないんですが、昨年末から1月一杯くらいまでトラブル対応に追われていて、それが終わったと思ったらコロナ禍が始まって、最初は私も中国で肺炎が流行って大変らしい程度の認識しかなかったのですが、あれよあれよという間に緊急事態宣言になりそうだということで全社リモートワークに移行するというオペレーショーンが始まって、名ばかり執行役員とはいえ自分の指揮下だけで140人、その家族を含めたら多分200人以上の人間の生活があるわけじゃないですか。前例のないことでも日々判断をしていかなきゃならないんで、まぁあんまりそういうのが苦にならない性格ではあるんですが、さすがにこれは大変なことだなと思いました。あっという間に時が過ぎたようにも感じるし、もう4月が遠い過去のようにも感じます。
私生活では9月末に離婚をしました。元妻とは出会って10年、結婚して7年でした。よくこんな男とこれまで連れ添ってくれたと元妻には感謝しかありません。そういうわけで10年ぶりに一人暮らしをすることになり、年の後半は文字通り生活の再構築をして過ごすことになりました。ほぼ引きこもりの生活なんでそれに合わせて部屋をいろいろ模様替えしたり、仕事をする書斎を作ったり、2年くらい通っていたマッサージ師が独立した直後にコロナ禍になってしばらく音信不通になっていたんですが連絡が取れて、12月からまた通うようになりました。来店型の仕事はほんとにいま大変だなと思います。
3月、まさにコロナ禍が明らかになってきたタイミングで20歳のとき以来、実に26年ぶりにライブをしました。当初は観客を入れる予定だったんですが、さすがに密だよねということになってギリギリで無観客ということにして、本当はストリーミングしようと思ったんですが、ライブハウスが地下で電波が来ず、終わってすぐに編集して公開ということにしました。世界最速の編集だったんじゃないかと思います。
万願寺卍Burning @新宿Live Freak 7th March 2020 【Director’s cut】 - YouTube
ライブが終わった後にバンドメンバーで今後の方向性を話し合いまして(笑)、それまでただのコピバンだったんですが(笑)、ZEONIC Hard Coreというコンセプトで曲を作ろうと。私がジオン魂をテーマに歌詞を書いて、Georgeがそれに曲をつけて、Kazooがエアドラムを叩いて、それを映像化するというプロダクションをほぼフルリモートでやっています。平均年齢も50歳の大台に乗りました。
自宅にいる時間が長いので昔観た映画を見返したり、炬燵に潜ってNHKオンデマンドで昔の大河ドラマを見たりしてますね。まさにニューノーマル。例年通り、今年観た映画で印象に残ったものを挙げていきます。
コブラ会
映画といいつついきなりドラマですが、アラフィフにとってこれほど胸熱なドラマもない。歯車が狂って負け続けた元悪役が懸命にやり直そうとするがうまくいかない姿が心を揺さぶる。
『コブラ会』予告編:『ベスト・キッド』の物語は続く - Netflix - YouTube
14の夜
『百円の恋』の監督。主演の子が巧い。個人的には(余り上昇志向がないのも相まって)こういう閉塞感みたいなものを感じたことはないんで、ある種の青春への羨望みたいなものがある。
映画 『14の夜』 (14 That Night) 予告編 - YouTube
これも意外によかった。後半、戻るところがある井浦新と、それがない成田凌の対照がいい。
井浦新、成田凌ら出演!映画『ニワトリ★スター』予告編 - YouTube
光
井浦新でもう一作。これは戻るところがない男たちの話。
パラサイト 半地下の家族
ソン・ガンホが大好きなんで。これは確か劇場で観た。いま韓国のエンターテインメントはどれみても面白い。韓国は日本の良いところも悪いところも極大化されているような社会だよね。
第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編 - YouTube
暗数殺人
キム・ユンソクが大好きなんで。チェ・ジフンのサイコパスっぷりもいい。芝居が巧ければそれだけでも観れる。
日本沈没2020
『DEVILMAN crybaby』の湯浅雅明監督作品で、前作同様賛否両論あるようだけど、私は好きです。『日本沈没』も見返しちゃった。
『日本沈没2020』予告編 - Netflix - YouTube
石田あゆみが美しい。
来る
オカルトやホラーというより『帝都物語』のようなサイキックウォーものとして面白い。
雨にゆれる女
青木崇高が気に入ったんでもう1作。大してなにが起こるわけでもないんだけど、音楽と映像がいい。
ポーランド産のホラーというよりダークファンタジー。人魚の2人が美しく、ちょっとt.A.T.uっぽくもあり、旧東欧っぽいデカダンとアイロニーがある。
コールドスキン
予告編からいい意味で期待を裏切られた。ホラーやパニックムービーではない。異種交流ものとでもいうのかな。
ババドック 暗闇の魔物
脚本と映像がよくできてる。単なるオカルトというより、子供が自閉症というか発達障害っぽくて、ひとり親で育児に苦しむ母親の心理劇とも観れる。
MAMA
これも母性がテーマのホラーかな。
REVENGEリベンジ
コラリー・ファルジャっていうフランスの女性監督でマチルダ・ルッツっていう子が主演なんだけど、クソみたい男たちにそれ痛くて死ぬでしょっていう酷い目に遭わされて、でも死ななくて滅茶苦茶にやり返して世界中の女性批評家から称賛の嵐だったらしい。
初恋
窪田正孝主演&三池崇史監督『初恋』ぶっ飛びの新予告 - YouTube
デンマーク産馬鹿映画の2作目。個人的には前作の方が好きだが続編を作った心意気を買う。
ソウトウぶっ飛んだ侵略者たちに対抗できるのか!?映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』予告編 - YouTube
Sweet Home
これも韓国産のネトフリドラマだけど、園子温のヴァンパイア・ホテルとデビルマンを足したような感じで、怪物に包囲された団地の住人一人ひとりの描き方が巧い。
Sweet Home | Official Trailer | Netflix - YouTube
巨乳メイドものだが深見真が原作なんで面白いかなと思って。ナウシカ〜セーラームーン〜エヴァンゲリオン〜まどか☆マギカと続く戦闘美少女の系譜。日本人はなぜかくも少女をこうまで戦わせるのが好きなのか。
HOMIE KEI〜チカーノになった日本人〜
このひとのYouTubeや著作を結構観たんだけど、ほぼひと回り上で中野区出身、自分よりちょっと前の先輩の話を聞くような感じがする。
ドキュメンタリー映画『HOMIE KEI〜チカーノになった日本人〜』予告編 - YouTube
今年読んだ本で印象に残ったものも挙げていきます。
ドキュメンタリーとして面白い。
日本が非常な自責社会に傾斜というか回帰していくなかで、その起源ともいうべき武士という社会集団の研究が近年凄く進んでいて、これは社会分析的にもっと注目されるべきと思う。
1946年の著作ということだが、これは名著。ロマノフ王朝から連続したものとして、ソ連ではなくロシア史としてロシア革命を分析するという、戦後左翼も右翼ももたなかった視点で描かれている。
最後に、年の瀬になってマラドーナの訃報がありましたね。マラドーナと言ってピンと来るのは40代以上なのかな。改めて振り返ってみると、彼はサッカー選手というより、20世紀最大のアンダークラスヒーローだったと思うんですよ。彼自身それに凄く自覚的だったし、いわゆるマイノリティというのとも少し違って、あくまでアンダークラス、人種や宗教や性別みたいな特定の社会集団というより階級を代表していて、それゆえの孤独というのが彼を非常にユニークな存在にしていたんだと思います。不可解な自殺など、なんというか不安な空気みたいなものが続いたまま新年を迎えようとしていますが、2021年はどういう年になるんでしょうね。
マラドーナが史上最高だとよくわかる動画!100年に一人の天才によるゴール&ドリブル サッカースーパープレイ アルゼンチン代表 ナポリ バルセロナ【Legend】 - YouTube
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