勝つときは汚く 負けるときは美しく

ふと気がつくといつも似たような話をしているので書き留めておきます

2018年に読んだ本 ゆく年くる年

10位

デジタルマーケティングの実務ガイド

デジタルマーケティングの実務ガイド

 

 この手の本て心構えや考え方か、あるいはツール類のマニュアルの類ばかりで、マーケティング実務をやらない/できない奴がやったつもりになるためのキャリアポルノばっかだよねと、まさにそこを補う趣旨で発注者/広告主側からの視点で書かれたガイド。地味にありそうでなかった感じ。

 

9位

 モウリーニョに「監督の仕事は日々の練習を考えることだ」という言葉があるけど、なんか頭の中で凄く壮麗緻密な絵図面を書くことばかり考えるひと多いよね。具体的に「何々をしなさい」という形で表現できないと絵は絵でしかないんだけどね。

 

8位

モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー

モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー

  • 作者: レナート・バルディ,片野道郎
  • 出版社/メーカー: ソル・メディア
  • 発売日: 2018/06/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 footballista の連載の書籍化。「数的優位」が完全に過去の概念であることがよくわかるし、90年代に世界を席巻したプレッシングを未だに最先端に奉っている日本が20年遅れていることもよくわかる。

 

7位

教養主義のリハビリテーション (筑摩選書)

教養主義のリハビリテーション (筑摩選書)

 

 「教養」の絶滅はもはや避けられないよなぁと感じつつ、でも反知性主義紙一重のマッチョなプラグマティズムばかりでもなぁ、じゃあどうすればいいのという論点からあんまり結論を急がない微温的な対談がわりと新鮮。

 

6位

影の中の影 (新潮文庫)

影の中の影 (新潮文庫)

 

 月村了衛は何を読んでも面白いが、ちょっとあり得ないくらい酷いことになってるウィグル自治区を巡る謀略戦を題材にしたハードボイルド。

 

5位

 

 今年はワールドカップイヤーだったんでサッカー関連の書籍が多かったが、大会前後にこの著作を読んでいたのはとてもよかった。日本のサッカー会が20年遅れていることは必ずしも日本人が後進的であることを意味しない、そう思える気鋭の論客。

 

4位

古代国家はいつ成立したか (岩波新書)

古代国家はいつ成立したか (岩波新書)

 

 周知の通り地味に日本史学の近年の発展は目覚ましいものがあるわけだが、丹念な史料の精査と調査技術のアップデートで古代のことも自分が学生だった頃より随分と学説も様変わりしている。弥生時代も紀元前10世紀まで500年遡るのが定説化しているらしい。

 

3位

 史学が躍進しているのは中世も同様だが、戦前は国学の流れを汲む史学というより国文学に近い実態、戦後は唯物史観をもろ食らった観念的な左派史学と、どちらにしても残念な状況が続いたのに対して、網野善彦以降、史料の地道で丹念な読み込みと調査の成果がここに来て非常に面白い若い研究者を輩出するようになってきている。特に良くも悪くもイデオロギーに偏した位置付けだった武士論の領域は活況を呈していて、この著作も新書ながら質が非常に高い。

 

2位

 

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

 

 AV監督二村ヒトシによる抉るようなエッセイ。読んでもなんだかよくわからないというひとは、それはとても恵まれているんだと思う。

 

1位

今川氏滅亡 (角川選書)

今川氏滅亡 (角川選書)

 

 活況を呈している史学の波が遂に今川氏にもっ!!と胸熱しかないが、近年の史学研究のベースになっているのは紙背文書(紙が高価だった時代、なにかの用途に使われた書類の裏側も使われたために遺った文書)や旧家所蔵の書簡、誓書、契約書などを読み込んで当時の社会関係を再現するというものなんで、今川氏みたいに滅びちゃった大名は遺っている記録が少なくて、やっぱりイマイチよくわからんのだなと。しかし著者の今川氏復権への熱い情熱にはリスペクトしかないので1位。