勝つときは汚く 負けるときは美しく

ふと気がつくといつも似たような話をしているので書き留めておきます

昭和のアニメを彩る記憶すべき男達シリーズ

 約1ヶ月前の2月8日に声優の森山周一郎さんが86歳で亡くなったそうです。私は子供の時分にキャプテン・ハーロックが大好きでですね、当時広告代理店でタカラの仕事をしていた父に頼んでセル画を貰ってきてもらったりしていて、特に『我が青春のアルカディアとかさよなら銀河鉄道999なんかのハーロックはほんとにかっこいいんですが、森山周一郎さんもこの両作品に出演していた渋い声優さんです。

 松本零士作品に批判的なひとは、御都合主義だとか全く辻褄があってないとか、とくにキャプテン・ハーロック銀河鉄道999は作品としてクロスオーバーしてる割に齟齬だらけで整合性が至る所て破綻していて、レビューとかみるとひとによっては酷評してたりもするんですが、いいんですよそんなの。松本零士宇宙は男の中の男のかっこいいシーンの並行世界みたいなものだから。

 

 森山さんが『我が青春のアルカディア』と『さよなら銀河鉄道999』で演じたのも、そんな松本零士宇宙の中でも一際輝き続けるであろう真の男の役どころでしたね。

 若い人には馴染みが全くない世界なんでしょうが(そして若い人がこれを読んでるとも思ってませんが)、そんな松本零士宇宙の男たちを後世に語り継ぐのも昭和に生まれた男の使命だと思うんで、出来るだけネットの海を浚って森山周一郎さんの往時を偲んでみました。

 

さよなら銀河鉄道999』で機械化人に追われながら999で旅立とうとする鉄郎を身を挺して守り抜いた老パルチザン

さよなら銀河鉄道999 感動シーン - YouTube

f:id:uRavator:20210326000959j:image

 こんな号泣必至のシーンをいきなり冒頭にもってくるというのが監督りんたろうのアイデアなのかどうか、昭和のアニメ制作者のとち狂ってるところというか、なんかコンテクストとか流れとか伏線とかじゃなくて「こういうシーンみんな観たいだろ」というドヤ顔で、とにかくかっこいいと思うシーンを出来るだけ頭から詰め込もうとする熱量が素晴らしい。

 崩壊していく線路を疾走する999の映像と背後に流れるBGMも最高、それを見送り生き絶える親爺の最期の台詞に森山さんの当てる声が渋くて最高、腹とか胸を撃たれてるのに何故か額から流れる赤い血、静かに落ちるパイプのカットも最高。この親爺、名前もないしこのオープニングしか出てこないのに全く出し惜しみなしで、男らしさ以外の要素が皆無。

 

『我が青春のアルカディア』でトカーガ族最後の女性が死んでしまい絶滅が決定的になってしまったあと、自分たち種族のためにイルミダスと戦ってくれたハーロックを救うために宇宙のスタンレーの魔女の燃え盛る炎に身を投げた老トカーガ兵

https://youtu.be/jiv8OJBNscE

f:id:uRavator:20210326001156j:image

 結構探したんですが、この老トカーガ兵のシーンの動画は残念ながら見つけられませんでした。そもそもトカーガ族だの宇宙のスタンレーの魔女だの言われても、全く状況が分からないと思いますが、これは是非本編を観て確かめていただきたい。

 この老トカーガ兵も見せ場はほぼこれだけなんですが、トカーガ族はイルミダスの被征服民でこき使われて、ハーロックとも戦わされたりした挙句、結局絶滅させられちゃうという哀しい種族なんだけれども、とても誇り高い人たちでもあり、最後に数人残った命をハーロックを救うために使うんですね。同胞たちにハーロックを救うために死のうと呼びかけたのがこの老トカーガ兵で、この作品の中でも一番重たいシーンです。

 トカーガ族のリーダーは誇り高き戦士ゾルといって、彼も同族を守るためにイルミダスにこき使われた挙句、結局非業の死を遂げるんですが、死んだ種族最後の女性というのは実はゾルの妹で、こののちハーロックアルカディア号に乗せて連れていくことになるトリさんは実はこの妹が飼っていた鳥なんです。トリさんが妹と惑星トカーガでゾルを待ちながらゾルニイチャン、トカーガヘカエレ、トカーガヲタスケテ」と鳴くシーンはほんとに切ない。因みにゾルの声は池田秀一でしたね。

f:id:uRavator:20210326003445j:image

 このトカーガ族というのはハーロック作品では結構重要で、TV版『宇宙海賊キャプテン・ハーロックにも登場しています。このときはイルミダスではなくマゾーンに征服された種族という設定でしたが、ゾルの見た目が考えられないくらい違います。

f:id:uRavator:20210326003627j:image

 見た目はこんなですが、やはりマゾーンに同族を人質にとられてハーロックと戦う羽目になり、敗れたあとに戦士の誇りを取り戻して、息子への遺言をハーロックに託して自爆してしまう切ない話でしたね。

 

 松本零士宇宙は単話読切の物理法則でできているというか、劇場版でもそれぞれはあんまり整合性や連続性のない、ベタだけどもメッセージのはっきりしたエピソードがずらっと並ぶ、ジャンプ的なものとはまた違った世界でとても好きなんですが、すでに平成くらいにはもう下火になってしまっているので、なんとか細々とでも令和に受け継がれていったらいいですね。