勝つときは汚く 負けるときは美しく

ふと気がつくといつも似たような話をしているので書き留めておきます

要するに弱者の戦略

杉山氏が森保ジャパンに異議。日本サッカーのガラパゴス化が進む

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180725-00010000-sportiva-socc

 

 お馴染み杉山茂樹。森保がどういう監督か、Jリーグみてないから知らないんだけど、オシムー岡田ー(アギーレ)ーハリルー西野と朧げながら繋がったのは、日本のサッカーって3バックか4バックか、攻撃的か守備的か、ポゼッションかカウンターか、そのどれでも要するに勝てなくて、出来るだけスカウティングして分析して試合ごとに緻密なゲームプランを立てて、選手は頑張ってそれを忠実に実行して、それで始めて列強とそこそこ勝負になるということだと思うんです。

 

 これが日本のサッカーですみたいなのは通用しなくて、正解は日本のサッカーは相手によって変わる、相手の弱点を研究して徹底的にそこを突くということなんじゃないかというのがロシアで西野さんが示したことで、これは案外ハリルやオシム、岡田さんと同じ路線だったと。西野さんはリアリストだから、ワ杯でガンバみたいなサッカーしないわけですよ。相手を研究して相手の良さを消して、ピッチに送る選手の武器を一点突破で勝ちに繋げる、そのためにスタッフは物凄く知恵を絞り、選手はそれを忠実にやり遂げる、それが日本のサッカーだと。そのために必要な自己犠牲や技術はある、それが日本らしさなんじゃないかと。

 

 西野さんの「なにが足りなかったんでしょうね」も技術や戦術というよりも、やはり狙いはかなり当たってて選手もそれを忠実に遂行してたにも関わらず勝てなかったということなんだろうなと。やはり西野さんに足りなかったのは時間で、なんとかスカウティングして分析してゲームプランは作った、招集した選手もそれを理解してやってくれそうな選手だけ、でもゲームプランというのは結局個人のもっている技術戦術から組み立てるしかないから、時間的にプランBプランCを用意するリソースも、その骨格になる組織作りもできなかった。あくまで間に合うもののなかから最善というのがロシア大会の日本だったなと。時間があればできたからどうかはまた別の問題。

 

 だから継続性が必要なのは裏方のスタッフやテクノロジーも含めた日本代表全体のパッケージで、日本のサッカーというのは3バックか4バックか、守備的か攻撃的かではなくて、どれでもあり得るということなんだと思うんです。森保がどういうスタイルかより、そのパッケージを運用できるか、なんとなく五輪も兼ねるということで、そこは意図にある気はするけど。

 

 杉山茂樹はある種の原理主義者なんで競技として現れるスタイルのところでの連続性を問題にしてるけど、そういう議論自体、今回の日本代表によって過去のものになったと思うんですけど、どうですかね。原理主義っていうのは強者の贅沢で、弱者というのは勝てるならなんでもやるべきだと思うんです。日本人はこういうの敗北主義として嫌うからそういわないのか、単に説明できないだけなのか、そこの連続性を問題にしていないのか、そこはこれからみてみないとわからないなと。

なにが足りなかったんでしょうね

 清水の監督だったゼムノビッチさんという人がが「日本の2対0は危ない」と言ってたそうで、欧州だと2点差って余程のことがないとひっくり返らないから試合を閉じにかかるんだけど、日本の選手は1点返されると浮き足立ってガタガタっと崩れるんで結構ひっくり返ると、そういう意味らしい。

 

 今回の試合がじゃあそういう試合だったかというと、そこまで浮き足立った印象はあまりなく、3点目を取りにいく采配が裏目ったという批判も、そりゃ負ければ当然出るわけだけど、そこはもう監督の決めの問題でしかなく、ベルギー相手に残り40分守り切る自信があるかと言われると、どっちかに張るしかなかった。どちらかに張る判断を早く出来るのが西野さんの大いなる美徳で、決めない時間が長過ぎる方が傷は大きかっただろうと。その意味では遅過ぎではなかったんじゃないかなと、この辺はもう観る人による。

 

 大迫なんかは2-0のあともっとはっきり守るべきだったみたいな趣旨のコメントもしてたけど、ベルギーはフェライニ入れて高さ勝負見え見えだったんで、ゴール前にドン引きしてルカクフェライニのターゲットにボンボン放り込まれて、アザールとデ・ブライネにミドルシュートをガンガン蹴り込まれて失点しないイメージはない。ある程度押し返さないと守り切れる残り時間ではなかった。

 どう守るかの問題なんだろうけど、カウンター狙いの武藤より本田を入れたのは少しでも前で少しでも長くキープして欲しかったんだろうし、柴崎下げたのは体格的に守備に限界があるのと、やっぱり必殺の縦パスはカットされるとまたすぐ逆襲喰らうんでまず守備、そして確実に繋ぐというタスクで山口蛍、多分そういう指示だったんじゃないかなと。

 

 始めから振り返るとベルギーは3-4-3、GLよりもメルテンスがサイドに張らないんでほぼ3-4-2-1、何れにしてもアザールルカク、デブルイネ、カラスコメルテンスの5人をみんな出したい、ベルギーは攻撃も守備も個人技ありきなんで、もういい選手を出来るだけ沢山送り出すスターシステムっていう考え方なんだろうなと。

 

 対する日本は基本的な並びはあんまり変わらないけど守り方はかなり考えてきてて、ベルギーの最終ラインがボールをもつと

 

①大迫と香川の2人はセンターバックへのマークを捨てて中盤のラインに入ってデブルイネとヴィツェルをマークして乾、原口と横並びのラインをつくってベルギーのDFラインから中盤に繋がせない。

ルカクは吉田と昌子の2人でマークする。

③長谷部と柴崎はその前でアザールメルテンス

④乾と原田は対面のウィングバック、

ルカクのところは2対1にしつつ、他は1対1で掴まえておいて、ボールサイドのサイドバックが連携してアタッキングサードでは2対1の関係でチャレンジ&カバーを徹底する。

 

 もとからチカラ比べではなくて知恵比べというか知恵対チカラの試合なので、少なくとも対策では上回ってたし、前半はかなり守れてた。みようによっては4-2-4-0みたいな形だけど最終ラインは頑張ってかなり高めにしてお互いの距離感縮めてたので、かなり狭いスペースに押し込んで2対1はつくれてた。というかアザールとかルカクは1人じゃ無理。

 前線の選手を守備組織に組み込むやり方はアトレティコシメオネに近い。西野さんは試合ごとに結構いろんな戦術トレンドを取り入れて、山本さんも折に触れてスカウティングスタッフを褒めてたけど、物凄く相手を研究して対策を立ててゲームプランをたてて、選手もかなりそれに応えられていた。この辺は本当にちゃんと総括した方がいい。西野さん自身そういう監督だし、実はハリルのやり方でもあった。ハリルはそれで「スタイルがない」と批判されてたけど、現実にはどことやってもいつも勝負になるチームなんていまの日本代表に望まないわけだから、スカウティングとゲームプラン、それを精確に実行できる選手、それが日本らしさなんじゃないのと。

 

 ベルギーは本来ウィングのカラスコを無理矢理ウィングバックで起用してるので左サイドの裏は空く。これはもうずっとそうなので、ここはも穴を空けといても攻め切るという考え方なんだと思う。

 GLにもましてデブルイネが守備をしないのでヴィツェルが走り回ってカバーリングしてたが穴は絶対空く。ここが完全に狙い目で、日本は左は乾、香川、長友の細かいパスワークで形つくれてたけど、右は原口や酒井がカラスコを振り切って長い距離走ってそこに柴崎がバスンとロングパスを通す。長谷部や吉田もたまに狙ってたけど、やっぱり柴崎でないと通らなかったね。原口の1点目は完全にこの形で狙い通りだったと思う。左のパス交換で人を寄せておいて空いた右に走りこんでサイドチェンジで一気にゴールまでいくというのは試合前のプランだったんだろうなと。

 

 2点先行されたベルギーはなりふり構っていられないので、メルテンスカラスコを諦めてフェライニとシャドリ投入、ある程度パワープレイでくる。

 ベルギーも流石に個人技だけのチームではないというか、並びも弄ってきて、デブルイネを1列上げて純然たるトップ下に入れてアザールを前がかりにして3-4-1-2の1に近い形にして、フェライニヴィツェルと並んで中盤センターのゾーンを守りつつ(3-4-1-2の4の真ん中)、攻撃時には一気にルカクの近くまで行ってクロスのターゲットになる。左はシャドリ外に開いてクロッサーになりつつ、守備時にはヴィツェルの脇につけて、3バックは左にスライドして右にムニエが落ちてきて4バックを形成して、4-3-1-2のような形になる。これで香川や乾がパスワークするスペースと逆サイドをある程度消せた。

 日本もブロック守備なんで入ってきた選手を捉まえようとするんだけど攻撃のときと守備のときでベルギーがポジションチェンジしながら入ってからので、前半のような2対1がつくれない。試合中に負けてる状況でパッとやり方変えられるのは、やっぱりベルギーの選手の個人戦術の高さ。個々にやってることは微妙な変化なんだけど、組織力があるっていうのは結局ワンプレーワンプレーのディテールの積み重ねなんですよね。日本は用意したプラン完遂するという点では今大会かなりいい線いってたけど、やはりこの辺で個人の差が出ちゃうかなと。優勝候補との違いというべきか。

 ベルギーはブラジル戦ではこの後半の形をスタメンにしてきたので、カラスコメルテンスを併用したスターシステムを諦めたのか、格下相手用のプランだったのかどうか。

 

 ベルギーの1点目はフェライニ入れてパワープレイでクロス放り込んだところで、川島が反応して前に出たんだけど、選手が密集して競ってるんで薄くしか触れず、パンチングに切り替えてペナルティエリア内にはたき落とす形になる。乾が戻りながらクリアしたけど逆サイドに振るのが精一杯でベルギーの選手に頭で折り返されて、この時点でもう川島は右往左往してるだけなんでゴールガラ空きで、ループシュートみたいになって失点。

 出るんだったらペナルティエリアの外まで弾かなきゃ駄目だし、ベルギーがターゲット増やして密集してるんだから、放り込まれたときに周囲の状況がみえてないで軽率にゴール空けた川島の判断ミス。この手の周りがみえてな判断ミスが今大会の川島には多い。セネガル戦でパンチングしたのがそのままマネに当たって入ったのとかもそうだし、メンタルの問題なのか試合勘の問題なのか。

 2失点目はセットプレイ崩れでペナルティエリア左側でアザールにボールがこぼれて大迫がマーク、それまでアザールには2人でいくっていうのを一生懸命やってたのに、なかのマークをみててサポートにいけず大迫が1対1のまま対応して、右足のシュートが1番怖いからそっちを切って、切り返されて左足でクロス上げられてフェライニの頭でゴール。アザールは狭いスペースでも左足で正確なクロスを上げる技術があるから結局1対1で防ぐのは無理っていう、百も承知のパターンで、なかのマーク捨ててでも誰かサポートにいって左も切れればっいう、もうそういう瞬間のディテールの差。

 

 試合前に準備したプランは完遂できたし、このレベルにならともうスーパープレイの1つや2つでないと勝てないけど、川島には2つビッグセーブがあったし、乾のスーパーゴールもあった。

 3点目を取りにいく選手交代、逆転カウンター喰らった本田のコーナーキックも勝ってるならともかく、ロスタイムで2対2、延長になって勝てる見込み、守り切れる見込み、考えてみて狙いにいっちゃったのが判断ミスとまで言い切れるか。

 

 確かに負けた理由を探せばいくらでもあるけど、この試合に限って言えばベルギーが負けるべき理由だって一杯あったし日本が勝つべき理由だってあった。アップセットを演じるだけの準備は出来てたし、足りないところだって、どんな試合、どんなチームでもあってもこれくらいはあって、それでも勝つチームはいくらでもいる。なのになぜか日本はディテールのちょっとしたところの差が全部敗戦に直結してしまう、それが何故なのか。西野さんの「なにが足りないんでしょうね」というのは、本当にそれくらいの手応えがあったんだと思う。

 

 スカウティングとゲームプラン、その精確な実行。もともと技術委員だった西野さんとハリルのあいだには結構連続性があったし、初めて日本の勝ち筋みたいなものが見えかけた大会だったんじゃないかなと思う。それだけにアップセットを演じて欲しかったし、その条件もあったと思う。なんとかリセットされちゃって美談に埋もれてしまわないで欲しいなと思います。

ベルギーはまだよくわからない

ベルギー 5-2 チュニジア

 

 ベルギーは黄金世代と言われながらメジャー大会では毎度鳴かず飛ばずで、いい選手はいるんだけどなんとかそれを並べてるだけ、前回大会でもユーロでも個々人が力技で仕掛けては潰される印象ばかり残った。

 

 今回のチームがそれからどれくらい変わったかなんだけど、このチームの場合は良くも悪くも個々人の能力の高さが特徴になってるんで格下相手の試合だと真価が測りにくい。

 ベルギーの命題はアザールルカク、デブライネ、カラスコメルテンスの5人をどう並べれば攻守の均衡を保って組織を構築できるのかなんだけど、このチュニジア戦では3-4-3で組んできた。

 デブルイネがグアルディオラの薫陶を受けてセンターハーフでもやれる目処が立ったんで、全盛期を過ぎた感のあるフェライニを外してヴィツェルと並べる。3バックにしたのは左サイドバックにこれといった選手がいなかったのか、ナポリのエースに成長したメルテンスカラスコをどうしても同時に使いたかったのか、カラスコを本来の左ウイングからウイングバックに下げて起用、右ウイングバックは本来サイドバックのムニエ。一見して、どうゆう試合をするかより出したい選手を全部出すために組んだ布陣にみえる。

 

 一方のチュニジア北アフリカのチームらしくボールコントロールが巧くてよく走る悪くないチームなんだけど、フィジカルの調整に失敗したのか選手がやたらとすぐ怪我して前半早々に2人交代、ちょっと微妙な判定でPKを取られたりで、正直この試合でベルギーの実力を判断するのは難しいかなと。

 少なくともベルギーの守備組織に関しては相当怪しいというか、強いチームとやったときにこれで大丈夫かいなという印象が強い。

 前線は3トップでセンターは当然ルカク、デカくて速い、往年のジャージウエアっぽいストライカー。いわゆる基準点型だけどドログバほどのパワーはないかな。その分結構動く、ベンゼマに近いプレイスタイル。そのルカクに絡むのがエースでキャプテンのアザールメルテンスメルテンスはほぼ右サイドに張り付いてウイング的な動き、アザールはサイドに出るというより自由な動いてトップ下に近い仕事をするので、前線は非対称。3-4-3ってかなりマンツーマン的なマッチアップしないと守れないので、この前線の3人がファーストディフェンダーとしてほぼ機能しないので中盤でのフィルタリングが効かない。

 右ウイングバックのムニエはもともとサイドバックなので縦に激しく動いて攻守ともにチャレンジできるし、メルテンスもサイドに張り付いているので比較的近くにいることが多いから、ボールを失ってもわりと高めの位置で相手を捉まえられるけど、左はアザールが中に入って開けたスペースをカラスコが使ってサイドアタックするのでその後ろのスペースはほとんどの場合はヴィツェルがカバーに入る。ボールを奪られたらアザールカラスコのサポートに入るというよりヴィツェルがサイドに流れて空いたところに降りて、デブルイネと並んで中央のスペースを埋めることが多く、カラスコはもともとウイングの選手なので頑張ってマークについてもなかなかボールを取り返すところまでいかない。右のメルテンスもある程度ついて行ったら追わなくなるので、全体としてベルギーの中盤はネガテイブトランシジョンは遅くはないのだけどバランスが悪くボールホルダーを捉まえ切れないのでズルズル下がってゴール前まで入り込まれる頻度が高い。

 ベルギーのセンターバックは競り合いに強く放り込まれても跳ね返せていたので一見余り危なくみえなかったし、この試合は早めに先制点が奪れてカウンターに丁度いい展開になったので大きな問題にならなかったけど、強いチームと当たってあそこまで簡単に中盤に突破されていたら抑えきれないんじゃないかしら。ヴィツェルがサイドに引っ張られる頻度が高いのでセンターがアザールとデブルイネの2枚だと簡単にバイタルやられそう。

 現になんだかんだでチュニジアに2点奪られる出入りの多い試合になったのは中盤がザルだったから。カウンターになったらルカクアザールは高確率で決める個人技があるし、チュニジアも前半で負傷で交代2枚使って後半は足が止まっていたので大量得点になったけど、強いチームと当たったときに個人技で打開できずにやられる毎度のパターンを繰り返しそうな気もする。この辺り、パナマチュニジア相手の戦い方と強豪との戦い方でうまく切り替えられか、次のイングランド戦は消化試合になるので、結局ラウンド16にならないと分からないという意味では、グループリーグの対戦順は良かったのか悪かったのか微妙かもしれない。

メッシがアルゼンチン代表というのが無理ゲーなんじゃないかと

クロアチア 3-0 アルゼンチン

 

 クロアチアの出来が頗るよい。毎度曲者揃いみたいな面子を揃えてくるのだけど、気がつけば16強入りはユーゴスラヴィア解体後初出場で3位に入った98年フランス大会以来20年ぶり。ちょっと意外。

 日本とも対戦したが、ボバン、シュケルプロシネツキ、ヤルニ、アサノビッチ、ビリッチなんかの個性の強い面子がそろった実力派チームだった。旧ユーゴ系のチームは選手一人ひとりの主張が強いというか、普段西欧のチームで傭兵をやってる腕自慢の連中が集まったチームなので、まず個人という意識が強いが、クロアチアは特にそういう色が強く出たチームだった。

 

 今回のチームはレアルの10番モドリッチバルサラキティッチが2枚看板で、初戦のナイジェリア戦ではこの2人が4-2-3-1の2に入って若手のクラマリッチがトップ下、マンジュキッチが1トップ、ペリシッチが左、レビッチが右という布陣で、ほぼ中盤を圧倒、守備は基本ブロック守備だが、結構ゲーゲンプレスもかけていて、リトリートとプレッシングのバランスがよかった。チーム全体としていくときと待つときの意識が合っているというか、この辺はモドリッチラキティッチのIQが高いので、この2人がいったらいく、リトリートしてきたら網かけて待つという感じでスイッチを切り替えているのかなと。ゲーゲンプレス自体でボールが狩れることはあまりないのだが、苦し紛れの縦パスを回収して落ちてきたモドリッチかラディッチに預ければ、前線の4人が走りさえすればそこにボールが出てくる、そんな感じだった。

 

 一方のアルゼンチンは初戦メッシのPK失敗などあって、アイスランドとドロー。メンバーを3人変えてシステムも4-4-2から3-4-3に変えてきていた。後付けでみれば、このシステム変更がかなりアルゼンチンにとっては不利に働いたなと。

 多分アルゼンチンは1戦目のあとのチームのコンディションがかなりネガティブでなにかを変えないとまずいという空気だったのかもしれないけど、ナイジェリア戦で4-2-3-1だったクロアチアはクラマリッチを外してブロゾビッチを入れた4-1-4-1に変えてきた。クラマリッチマンジュキッチと実質2トップだったのに対して、今回は完全なマンジュキッチの1トップ。クロアチアのタディッチ監督はアルゼンチンのシステム変更を予測していたかどうか、むしろブロゾビッチをアンカーにすることでバイタルの人口密度を上げてメッシの使えるスペースを消しにきたんだとおもうけど、クロアチアの前線がマンジュキッチ1人になったの対してアルゼンチンはDFを3人残していて、中盤から前で2人の数的不利。

 中盤は守備時にはクロアチアの両ウィングが落ちてきて4枚、アルゼンチンの中盤もウィングバック2枚とセンター2枚で4対4の同数のマッチアップ、特にセンターはモドリッチラキティッチの2枚に対してマスチェラーノとアクーニャの同数では勝負にならない。そこを抜けてもバイタルにはブロゾビッチが構えていて、メッシの足元につけてもカットインするスペースをあらかじめ潰してあるので、なかなか決定的な展開にならない。

 そのメッシも含めたアルゼンチンの前線3枚に対してクロアチアは4バック、メッシは一応右ウィングというかクロアチアの左サイドバックセンターバックの隙間のメッシのいつものホームポジションを中心に自由に動く。本来3-4-3で4-1-4-1とマッチアップするならウィングは両サイドバックにマッチアップしないといけないのだが、クロアチアの左サイドバックが高めの位置に入ってもメッシがそれを追いかけてくるわけもないし、そもそも近くにいないことも多いし、そんな仕事をメッシにやらせるのは無駄でもある。

 アルゼンチンのウィングバックは本来クロアチアのウィングを捉まえるべきなのだが、サイドバックが高めに入ると自軍のウィングとペアで対応すべきなのか(セオリーではそうだが、実際には降りてこない)、3バックのボールサイド側の選手とペアを組むのかはっきりしておらず対応が後手になっていた。

 また中盤が同数なのでマスチェラーノあたりがDFからボールを引き出そうとおもって降りてきてもモドリッチラキティッチがついてくるので、ほとんどの場合ボールを前に出せず最終ラインに戻していた。

 結果的にDFから中盤になかなかボールがつけられない。アルゼンチンはセンターバックが2枚余っているので、そこがドリブルで持ち上がって、ウィングバックか前線の選手の足元につけるのがほぼ唯一の組み立て。アルゼンチンのセンターバックにドリブルで一人交わしたり、前線の足元にピタリと縦パスつける技術はないので、クロアチアはアルゼンチンのセンターバックが持ち込んできたときにはやらせておいて縦パス入ったところで刈り取る。それでもメッシとかアグエロは個人の技術があるので、それでなんとかしてしまえる場面は結構あったのだが得点には至らず。

 

 カバジェロの華麗なミスパスは、あれはもうあのレベルのキーパーしかいないということ自体が問題なので、この試合への入り方でどうにかなるものでもない、川島と同じ。ただアルゼンチンはアイスランドと引き分けたのが余程堪えたのか、試合の入り方がベンチも含めてナーバスだった印象、失点した後は全員がカッカきてて、オタメンディなんか今季プレミア最高のセンターバックという評価だったのに、完全に以前の荒いだけの選手になってた。サポーターも1点取られただけで意気消沈してたから、多分今回のチームに自信がなかったんじゃないかという気がする(失点の仕方が悲惨だったせいもあるだろうけど)。

 

 そのあとはモドリッチの個人技とカウンターで2失点して試合終了。結局のところメッシ中心のアルゼンチン代表というのが絵に描いた餅だったのかなと。メッシ自身も12歳でスペインに渡ってからバルサ一筋なわけで、大体アルゼンチン代表って監督も含むてボカ出身者中心かリーベル出身者中心かで組むケースがほとんどで、外様のメッシが余りにも隔絶した存在過ぎて、それでも彼を中心にせざるを得ないところが泣き所だったかなと。前回も準優勝までいったけどメッシがハマってたかというと全然そんな印象ないし。アルゼンチンのサッカーって伝統的にドリブル主体で、とにかくドリブルで突っかけて詰まったら誰かに渡してまたドリブルで突っかけるサッカー。メッシ自身のコアスキルはドリブルだけど、バルサのサッカーはアルゼンチンとは全然違うからね。

 

 今回予選でメッシの置き場所を探して4-4-2の2トップの一角になんとか収めたけど、アイスランド戦で相手のブロック守備にガッツリはまっちゃって機能しなかったから3-4-3に変えたら、もう完全に組織的な機能不全になってメッシを活かす云々以前の問題になったと。

 もし3-4-3でメッシを起用するならウイングじゃなくてセンターフォワード(偽9番)にするか(そうするとアグエロが出られない)、バルサみたいに逆サイドのウイングが守備時には中盤に降りて、メッシとアグエロの2トップを残した4-4-2に変形させるかしかなかったと思うけど、後者は今回のアルゼンチン代表がぶっつけ本番でやるには難易度が高過ぎたと思う。

 サンパオリ監督ほどの戦術家がこの程度のことわからないはずもないので、結局メッシの存在がでか過ぎてアルゼンチン代表を取り巻く環境が政治的になり過ぎたんだと思うんですよね。もの凄いプレッシャーとノイズのなかで形を整えるのが精一杯で、とてもチームを洗練させて積み上げられるような状況でもなく、実質的にはスペイン人(というかカタラン)のメッシをアルゼンチン代表の中心にするっていうミッションが破綻した。メッシも選手として飛び抜けてても、パーソナリティという面で代表でのアウェー感を払拭できるほど強いものを持っていない。

 

まあまだ可能性的にはアルゼンチンの16強入りは消えたわけじゃないけど、このメッシとアルゼンチン代表の関係って結局ずうっと続いてる問題だと思うし、前回準優勝という結果を残してもなんだか解決されないなかったなあと。

 もしもカタルーニャ代表が実現していたら、もしかしたらメッシのワールドカップは全然違う歴史を辿っていたのかもなあとか思います。

滝二の中西くんはいまなにを想ってるだろう

日本 2-1 コロンビア

 

 正直勝つとはあんまり思ってなくて、勝つとしたらかなりアクシデントだろうなと。そもそも日本がどういう仕上がりか全然わからんぶっつけ本番だったし。

 その点、早い時間帯でコロンビアに退場者がでてPKとれたのはアクシデントにもみえるが、コロンビアのセンターバックは終始どっちが競ってどっちがカバーに入るみたいなコミュニケーションが曖昧でドタバタしてたから、これは多分西野さんのスカウティングで把握して狙ってたんだろうなと。

 

 立ち上がりから点取るまではいわゆるゲーゲンプレスもどきで、ボール失ったらすぐ近くの選手がボールホルダーを捉まえにいって、背後の選手が連動して詰めていってコロンビアの前の選手も捉まえる、外されたらリトリートしてハーフウェイラインから捉まえ直す、取れたら大迫に向けて縦に蹴る。

 コロンビアのセンターバックのコンビが悪いから大迫に競らせれば結構簡単に崩せるんじゃないかと、これは当たったなあと。この形は絶対西野さんの狙いで、もう大昔の話だけどマイアミの奇跡のときにブラジルのCBアウダイールとGKジーダのコンビネーションが悪いのを狙って、そこにロングボール蹴らせて城に競らせたら、本当に交錯して後ろにこぼれて点になったと、発想は同じ。

 少し高めの位置でボールとれて縦パスが大迫に入って、完全に裏とれたわけじゃないけどコロンビアのセンターバックカバーリングポジションとれてなくてわちゃわちゃしてるところを引きずるように競り勝ってシュート、こぼれに追いついた香川がもう一回シュートしてハンド→PK。

 

大迫は半端ない。

 

 なので、この先制点は西野さんの狙った通りの形でアクシデントではなかったろうなと。退場とPKはまさかだったけど。

 先制したあとは日本は引いたっていうか、そもそもゲーゲンプレスは奇襲に近い作戦で立ち上がりだけ、体力的にも精々15分が限界だろうし、緻密な練習なんてする時間もなかったろうからゲーゲンプレス自体がもどきで、前の選手が捉まえにいっても後ろの方の選手が詰め切れれてなくて外れてたり結構危なっかしくて、多分コロンビアが慣れたらあっという間に外されたろうけど、早めに得点までいけたんでバレずに済んだ。

 

 日本は4-2-3-1と言ってたけど、守備のときは4-4-2で大迫と香川のツートップの後ろにMFとDFでハーフウェイライン付近で2ライン布いて網を張る。そこに入ってきた選手の対面に立って縦を切ってとにかく裏をとらせない。アイスランドとほぼ同じ形で、ぶっちゃけ弱い国がワールドカップで勝とうとしたらもうこれしかないと思う。

 コロンビアはセンターバックが足元下手な上に中盤にも組み立てできる人材がいないみたいで、自陣からボール持ち出すのはクアドラードかキンテロの力技というか個人技頼み。大迫と香川は守備のときはボール引き出しにきた中盤の選手のマークについてセンターバックは捨てる、蹴らせれば吉田と昌子にファルカオと競らせればそうそう負けない、そうするとサイドしかないからここは乾と原口が頑張ってサイドバックに喰らいついて長友酒井とで守る。コロンビアの17番の左サイドバックが足が速くて強烈だったけど原口がなんとか頑張って気合で戻る。それしかない。

 

 退場者がでたコロンビアは結構交代を引っ張ったけど、多分ペケルマンは日本がどういうチームかよくわからなかったんだと思う。なにせ監督交代から時間がなさすぎて日本人でもどういうチームかわからないわけだから。

 日本は先制したあとは縦パスが消えたんでサイドで2対2、3対3の潰し合いみたいになって、コロンビアは中盤からの持ち出しはクアドラードかキンテロの個人技頼みだから、どっちを外すかで悩んだんだろうけど、結局クアドラードOUT。多分サイド突破しても1人少ないからターゲットはファルカオだけになるんで、それよりもキンテロ残して中盤でなんとか力技で前向いてシンプルに縦一本みたいな狙いにしたんじゃないかと。この交代は結構効いていて、大迫とセンターバックの競り合いが分が悪いんで、近くでこぼれを狙ってる香川を潰しにかかって、実際この後は香川は消えた。このあたりはさすがにペケルマンだなと。

 

 同点にされたのは、長友がクリアミスって後ろに反らしたのをカバーに入った長谷部がファルカオと競ってファウルとられたのをキンテロにFK蹴り込まれたと。

 

 川島どうなってんの。

 

 まあ長友のクリアミスもイケてないんで、しょっぱいプレイ2つ連続したらワールドカップでは失点するなと。川島は開始からずっとナーバスで、アレさわれてんだから掻き出せよ。下抜けてきたの不意突かれ過ぎでしょ。

 

 前半同点で折り返し。後半立ち上がり少しゲーゲンプレスもどきやろうとしてすぐやめて、また縦に蹴るようになると押し込まれる時間が減って大迫もよく動いてボール引き出してるし、1人多い中盤で柴崎も前向けるんで楔がポンポン通るようになった。早めにキンテロに替えてハメス入れてきたけど、ハメスのコンディションが悪すぎてコロンビアの中盤がスカスカになったけど、相変わらず香川がバリオスに消されてるんで本田投入。コロンビアが前に出てこれないせいで裏のスペース消えたけど、押し込んで日本のセットプレーが増えてCKから3人くらいに競り勝って大迫が決めて勝ち越し。

 

大迫は半端ない。

 

 コロンビアはバッカ入れて蹴ってくるかなとおもったらそういうわけでもなく、アスリートっぽい選手が多くて長いキック放り込んでくるタイプがいないんだよね。ハメスはなにもしてないんで実質2人少ないみたいな状況になってたんで、やっぱりキンテロは残すべきだったんじゃないかなあと。

 

 試合は日本が持ち堪えて終了。

 

 原口、乾の両サイドは頑張ってコロンビアのサイドバックに喰らいついて完全に振り切られるシーンはなかったから、横からクロス入れられても中のカバーでなんとか帳尻合わせられた。乾は攻撃でも頑張ったがボールロストが多かった。

 長友のヘディングミスはあったけど両サイドバックは攻守にまずまず。柴崎は特に後半切れ切れで日本のMFにしては珍しくどんどん縦に楔打ち込んでくるスタイルは好感度高い。長谷部がうまく引き出していた。

 センターバックのコンビはコロンビアと対照的に吉田が競って昌子がカバーと持ち味がはっきりしててほぼ完璧。

 

大迫は半端ない

 

香川は10分で消えて本田はアシストで1つ仕事した。ラスト15分くらい前線でターゲットマンとして頑張って競って、どちらかというと試合を殺す仕事だったなと。

 

 試合後のインタビューみてて思うのは、川島、香川、本多あたりの“老害”と批判された選手がかなりナーバスになってるなあと。本田とか目つきおかしいし。まあいつもおかしいが。日本はこれまで選手の内紛みたいなのはなかったけど、ちょっと不穏分子みたいになりかけてる空気があるのが気がかり。長谷部あたりがうまくやってくれればいいけど。

 

 西野さんは策士ぶりが際立つというか、やってるサッカー自体は守備に関してはアイスランドに近い4-4-2のゾーンディフェンス。というか、客観的に考えたら弱者のチームはこれ一択になるのは、近年のCLとかで明らか。

 攻撃はアイスランドの高さみたいなストロングポイントはないけど、大迫と柴崎の個性をうまく活かして程よく縦に速いダイレクトプレイとサイドの縦のコンビでの崩しだけど、次からはここは大迫ー柴崎のラインは消しにくるだろうし、まあ攻撃はどちらかというと試合ごとに西野さんが狙い考えるんでしょうね。その意味ではスカウティングが生命線かもしれない。

 

 やっぱりハリルとかボラ・ミルティノビッチとか岡田さんと同じタイプでどういうサッカーをするかよりも「次の試合に勝つサッカー」に集中するタイプなんですよね、この監督は。トーナメント向きだし、弱いチーム向き。

2017年に観た映画ゆく年くる年

あくまで今年は観た映画なんで公開年ではないです。

 

【10位】ジョン・ウィック

チンピラに犬を殺されて復讐の鬼になるキアヌが強いんだけどあんまり強そうじゃなくてハマっている。続編も出たし久々の当たり役なのではないかと。 

https://youtu.be/jie65yTNcC4

 

【9位】デッド・ノート

バッタもんみたいなタイトルだが、出てくる人間みな悪党で犯した罪が暴露されていってバンバン惨たらしく殺されていく、見ようによっては勧善懲悪モノ。

https://youtu.be/ZSLvCoSXClo

 

【8位】アンフレンデッド

米国産ホラーだと所謂WASPの学生は大体すぐ殺されるヤラレ役で「あーやっぱりどこの国でもうええええいwww感のあるクソガキはみんな嫌いなんだな」と思いながらいつも観てますが、これはそんなクソガキしか出てこないスリラーで、結局誰が一番クソガキかが最大の見所。 

https://youtu.be/Y2_2r5dONyk

 

【7位】デッド・オア・リヴェンジ

地雷を踏んで動けない状況をソリッドシチュエーションスリラーというのかよくわかりませんが、助けそうで全然助けないグルジア人のオッサンの卑劣かつ野卑な芝居が前半の見所。後半の見所は、それなりよき父親のオッサンの家族まで巻き込む兎に角後味が悪く誰も救われない復讐劇。閲覧注意。

 https://youtu.be/OSGqreAxYwc

 

【6位】哭声

ど田舎で起こった事件を主題にした『殺人の追憶』的なサスペンスかと思いきや、後半は『帝都大戦』みたいなサイキックウォーズで、國村隼嶋田久作的な怪演。

https://youtu.be/QEL_GJJ5Izk

 

【5位】アイアン・フィスト

悪の武闘家集団みたいなのに両腕を切断された鍛冶屋が鋼の義手を嵌めて復讐する。なぜか義手の方が強い。

https://youtu.be/fIvLxM_I75U

 

【4位】哀しき獣

北朝鮮から韓国に渡った男が兎に角全く救われない。キム・ユンソク演じるヤクザの極悪過ぎるが、結局誰も救われない。

https://youtu.be/R3oRqtFDjdI

 

【3位】スダボロ

兎に角無茶苦茶ヤキが入るところがわりとリアル。主演の永瀬匡が往年の清水宏次朗をもう少し繊細にしたような感じでなかなかいい。清水富美加改め千眼美子さんも出演。

https://youtu.be/l4HNxKddV4g

 

【2位】葛城事件

他人事とは思えない家族像が印象的で、個人的に2位。

https://youtu.be/VqQWwXELoFc

 

【1位】白い棺

カルトに子どもを攫われた母親同士が血みどろで戦わせられる、全く救いのないアルゼンチン産ホラー。どういう動機があればこういう映画を撮ろうと思うのかしら。閲覧注意。

https://youtu.be/kBRlB8Ea0Kw

【ネタバレ】エドワード・ノートンとデイヴィッド・フィンチャー再び

というわけではない『ゾンビ・ファイト・クラブ』というシンガポールゾンビ映画の話です、はい。

 

https://m.youtube.com/watch?v=uCjgAlsrI-8

 

制作は香港らしく結構見憶えのある顔が多いです。出オチっぽいタイトル(ほんとに原題がZombie fight club)の割に元祖ファイトクラブとあまり重なる部分がないんですが、強いて言えば弾薬が底を突くと拳骨でゾンビの顔面を割り破って脳漿が飛び散ったりするところでしょうか。

 

冒頭ほとんど説明がなく、どこかの都市が崩壊するところから始まるんですが、実は前半後半でかなり違う映画になっていて、前半は老朽化した高層マンションが舞台です。詳しい説明はないんですが住人のパリピっぽいラッパーのところにLAから届いたヤバい感じのドラッグをアッパーになって呑んだらみんなゾンビになったみたいな感じで、ガスなどの空気感染ではなく噛まれて経口感染のはずなんですけど、なんだかそれにしては物凄い速度でパンデミックして、老朽化したマンションなのにどこにそんなに住人がいたんだよってくらいの数のゾンビに囲まれます。なんならいつの間にかマンションの外もゾンビだらけです。

 

高層マンションという密室設定で大量のゾンビに囲まれるあたり『ザ・ホード 死霊の大群』を彷彿とさせます。『ザ・ホード 死霊の大群』つって通じるのかわかりませんが。

 

https://youtu.be/PIXuoB1yWr4

 

登場するマンションの住人に結構特徴があって、ヒロインの女優さんは全身義体喜多嶋舞みたいな感じ、そもそも女性はみんなサイボーグみたいな体型です。ヒーローはマンションに住んでる売人を摘発に来たSWAT(実は売人の金を奪いに来た)の隊員で、彼が素手でゾンビの顔をブチ破ります。他にも紀里谷和明似のギャングがいい雰囲気出してたり、それぞれがドラマらしきものを背負ってるんですが、すぐにゾンビの大群に全部なし崩し的に呑み込まれます。

 

恋人がゾンビになって絶望した紀里谷がプロパンガスに火をつけてマンションを爆破するところ、両足が電動義足の爺さんに車を借りた喜多嶋舞とSWATが辛くも脱出するところで前半終了、唐突に北斗の拳的な世紀末感満載の後半に物語が移ります。

 

パンデミックで崩壊した都市を恐怖で支配するのは、やはり娘をゾンビにされた科学の先生で、どうやったのかゾンビと人間の両方を奴隷にして君臨しています。よく香港映画で見かける俳優さんですが名前まではわかりません。とにかくディテールの説明がありません。喜多嶋は髪を切って全身義体梨花みたいになりました。以後、梨花と呼ぶことにします。

 

この科学の先生が娯楽として闘技場をつくり、そこでゾンビと人間を戦わせています。多分これがゾンビファイトクラブなんでしょう。どちらかというとマッドマックス サンダードームの方が雰囲気近いです。SWATと梨花も一生懸命に戦っています。

 

https://m.youtube.com/watch?v=gXFcngqX7uY

 

このあたりまでほぼ時間を使い終わったのか、クライマックスのアクションとかラスボスとの最終決戦とかもなく、謎自体が特にないのでどんでん返しもないまま急速に終幕に向かいます。この辺、香港映画っぽいです。タイトル忘れちゃったんですが昔みた香港映画で、女スパイみたいなのが忍び込んだ邸宅に爆弾が仕掛けられていて爆発する瞬間にベランダから庭のプールに飛び込むというスタントがあったんですけども、ベランダから跳躍した瞬間に唐突に静止画になって「このスタントであまりに火薬の量が多過ぎて女優が火だるまになって大火傷を負い、撮影は中止となりました。女優は一命を取り留め、いま続編の撮影に向けて懸命にリハビリをしています」みたいなテロップが流れて、そのままエンドロールっていう、ちょっと後にも先にも憶えのない度肝を抜かれた作品がありました。

 

香港映画まじぱねえっすよ。

 

で、科学の先生は梨花を嫁にしようとして、それまで大人しかった娘ゾンビに呆気なく喰い殺され、SWATはゾンビとの戦いで噛まれて感染、梨花を闘技場の外に逃して、ラストシーンはゾンビになって街をウロウロしてるSWATで終わります。

 

なんか久しぶりに香港映画らしい香港映画をみたなと、デイヴィッド・フィンチャーのバッタモンですらないところがいっそ清々しいなと、いまそんな気持ちでいます。