ベルギー 5-2 チュニジア
ベルギーは黄金世代と言われながらメジャー大会では毎度鳴かず飛ばずで、いい選手はいるんだけどなんとかそれを並べてるだけ、前回大会でもユーロでも個々人が力技で仕掛けては潰される印象ばかり残った。
今回のチームがそれからどれくらい変わったかなんだけど、このチームの場合は良くも悪くも個々人の能力の高さが特徴になってるんで格下相手の試合だと真価が測りにくい。
ベルギーの命題はアザール、ルカク、デブライネ、カラスコ、メルテンスの5人をどう並べれば攻守の均衡を保って組織を構築できるのかなんだけど、このチュニジア戦では3-4-3で組んできた。
デブルイネがグアルディオラの薫陶を受けてセンターハーフでもやれる目処が立ったんで、全盛期を過ぎた感のあるフェライニを外してヴィツェルと並べる。3バックにしたのは左サイドバックにこれといった選手がいなかったのか、ナポリのエースに成長したメルテンスとカラスコをどうしても同時に使いたかったのか、カラスコを本来の左ウイングからウイングバックに下げて起用、右ウイングバックは本来サイドバックのムニエ。一見して、どうゆう試合をするかより出したい選手を全部出すために組んだ布陣にみえる。
一方のチュニジアは北アフリカのチームらしくボールコントロールが巧くてよく走る悪くないチームなんだけど、フィジカルの調整に失敗したのか選手がやたらとすぐ怪我して前半早々に2人交代、ちょっと微妙な判定でPKを取られたりで、正直この試合でベルギーの実力を判断するのは難しいかなと。
少なくともベルギーの守備組織に関しては相当怪しいというか、強いチームとやったときにこれで大丈夫かいなという印象が強い。
前線は3トップでセンターは当然ルカク、デカくて速い、往年のジャージウエアっぽいストライカー。いわゆる基準点型だけどドログバほどのパワーはないかな。その分結構動く、ベンゼマに近いプレイスタイル。そのルカクに絡むのがエースでキャプテンのアザールとメルテンス。メルテンスはほぼ右サイドに張り付いてウイング的な動き、アザールはサイドに出るというより自由な動いてトップ下に近い仕事をするので、前線は非対称。3-4-3ってかなりマンツーマン的なマッチアップしないと守れないので、この前線の3人がファーストディフェンダーとしてほぼ機能しないので中盤でのフィルタリングが効かない。
右ウイングバックのムニエはもともとサイドバックなので縦に激しく動いて攻守ともにチャレンジできるし、メルテンスもサイドに張り付いているので比較的近くにいることが多いから、ボールを失ってもわりと高めの位置で相手を捉まえられるけど、左はアザールが中に入って開けたスペースをカラスコが使ってサイドアタックするのでその後ろのスペースはほとんどの場合はヴィツェルがカバーに入る。ボールを奪られたらアザールはカラスコのサポートに入るというよりヴィツェルがサイドに流れて空いたところに降りて、デブルイネと並んで中央のスペースを埋めることが多く、カラスコはもともとウイングの選手なので頑張ってマークについてもなかなかボールを取り返すところまでいかない。右のメルテンスもある程度ついて行ったら追わなくなるので、全体としてベルギーの中盤はネガテイブトランシジョンは遅くはないのだけどバランスが悪くボールホルダーを捉まえ切れないのでズルズル下がってゴール前まで入り込まれる頻度が高い。
ベルギーのセンターバックは競り合いに強く放り込まれても跳ね返せていたので一見余り危なくみえなかったし、この試合は早めに先制点が奪れてカウンターに丁度いい展開になったので大きな問題にならなかったけど、強いチームと当たってあそこまで簡単に中盤に突破されていたら抑えきれないんじゃないかしら。ヴィツェルがサイドに引っ張られる頻度が高いのでセンターがアザールとデブルイネの2枚だと簡単にバイタルやられそう。
現になんだかんだでチュニジアに2点奪られる出入りの多い試合になったのは中盤がザルだったから。カウンターになったらルカクやアザールは高確率で決める個人技があるし、チュニジアも前半で負傷で交代2枚使って後半は足が止まっていたので大量得点になったけど、強いチームと当たったときに個人技で打開できずにやられる毎度のパターンを繰り返しそうな気もする。この辺り、パナマやチュニジア相手の戦い方と強豪との戦い方でうまく切り替えられか、次のイングランド戦は消化試合になるので、結局ラウンド16にならないと分からないという意味では、グループリーグの対戦順は良かったのか悪かったのか微妙かもしれない。